コンプライアンス

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「請負契約のフリーランス」を独禁法で保護へ

・悪質なケースでは摘発も

 企業などから個人で直接仕事を請け負って働く「フリーランス」とよばれる人たちが、契約で不当な制限を受けた場合、独占禁止法(独禁法)で保護されることになりました。フリーランスが増えていることを受け、実態調査を行ってきた公正取引委員会(公取委)の有識者会議が見解をまとめ、明らかになったものです。

 どういったケースが違反にあたるかを2月中にも公表し、各業界に自主的な改善を促す方針ですが、悪質なケースが見つかれば摘発も検討しているようです。

 

・「法律の空白地帯」が発生

 企業と雇用契約を結ばずにフリーランスとして働く人は、現在1,000万人以上いるとされています。システムエンジニアやプログラマーといった職種のほか、プロスポーツ選手や芸能人も含まれ、近年はインターネットを通じて不特定多数の個人に仕事を発注する企業も増えているようです。

 ただ、こうした働き方は労働基準法などの対象となるのか、事業者の適切な取引環境を守る独禁法の対象となるのか、非常にあいまいだったため、企業側から不当な要求を受けても対抗できない「法律の空白地帯」になっていました。

 

・不当な報酬や移籍制限、囲い込みなどを規制

 公取委は、昨年からフリーランスの労働環境の実態調査をすすめ、有識者による検討会を重ねてきました。今回まとめた見解では、企業側からフリーランスになされる不当な要求は独禁法の対象となりうると認定。「企業側が報酬や仕事内容などの約束を守らない」「補償費も払わずに他社と仕事をさせない」等を求めた場合は独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」などにあたるおそれがあるとしました。

 また、プロスポーツ選手の不当な移籍制限や、芸能事務所による芸能人の囲い込みなども独禁法違反にあたるおそれがあるとしています。

 

・クラウドソーシングの急増に対応

 公取委が、フリーランスへの不当な要求を独禁法の対象と認めるのは、「雇用関係ではない働き方」を守る必要性が高まっているとの判断からです。仕事の発注側がウェブサイトなどで仕事をしたい人を募集するクラウドソーシングの出現は、こうした働き方を広げる一方、報酬の支払いが遅れたり、仕事内容が一方的に変更されたりするトラブルの急増にもつながっているのです。

 公取委の方針にはこうした現状を是正するねらいがあり、見解をまとめることにより、人材の活用を活性化させ、消費者サービスの向上につながることが期待されています。

職場におけるハラスメントの実態とハラスメント規制の動き

・職場でハラスメントを受けた・見聞きした人は5割超

 近年、職場における様々なハラスメントが取り沙汰されており、その防止策や対応策が検討されています。

 日本労働組合総連合会(連合)が、職場やプライベートにおけるハラスメントと暴力に関する実態を把握するために実施した「ハラスメントと暴力に関する実態調査」(対象:全国の18歳~69歳の有職男女1,000名)によると、職場でハラスメントを受けた・見聞きしたことがある人は5割超となっているそうです。

 まだまだハラスメントは減っていない現状が読み取れます。

 

・ハラスメントの類型も多様に

 同調査では、職場で受けた、または見聞きしたハラスメントを聞いたところ、「『パワハラ』などの職場のいじめ・嫌がらせ」が45.0%、「セクシュアルハラスメント」が41.4%、「ジェンダーハラスメント」(性別役割分担意識を強調するハラスメント)が25.4%、「マタニティハラスメント」(妊娠・出産に関連するもの)が21.4%、「ケアハラスメント」(育児・介護をする人に対するハラスメント)が19.8%、「SOGIハラスメント」(性的指向や性自認などを引き合いに出して嘲笑や揶揄すること)が13.7%となっています。

 パワハラやセクハラ以外にもハラスメントの類型は多様化しており、職場には様々なタイプのハラスメントが存在していることがわかります。

 

・「誰にも相談しなかった」が4割強

 また、ハラスメントを誰から受けていたか聞いたところ、いずれのハラスメントでも「上司や先輩」の割合が最も高くなっていました。

 また、ハラスメントを受けたものの「誰にも相談しなかった」人が4割強となっており、ハラスメント被害を相談しても、半数近くが「親身に聞いてもらえたが具体的な対応に進まなかった」と答えていたそうです。

 社内の相談・対応の仕組みが効果的に機能するような体制作りが必要だといえます。

 

・パラハラ規制の動き

 現在、厚生労働省の職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会は、パワハラ防止の対応策として、「加害者への制裁」、「事業主がパワハラ防止配慮義務を負うことの明確化」、「事業主へのパワハラ予防措置・事後措置の義務付け」、「事業主の自主的な対応を促す」の4つの例を示しています。

 ハラスメントに対する規制強化の動きも注視しつつ、職場のハラスメント対策に力を入れていきたいところです。

建設現場の「週休2日制」を実現へ ~建設業の働き方改革~

・建設業の働き方改革指針

 政府は、建設業の働き方改革として、建設現場の「週休2日制」の導入や雨や雪などの悪天候を考慮した「適正な工期」の設定などを盛り込んだ指針を決定しました。

 この指針には罰則はありませんが、建設業の長時間労働の是正に向けた取組みとして、これから発注する公共・民間工事を対象に実施するとしています。

 

・残業規制の適用に5年間の猶予

 今年3月に公表された「働き方改革実行計画」では、原則として全業種で残業時間を年間720時間、繁忙月は100時間未満まで認める上限を設ける方針を決定しましたが、建設業は運送業や医師とともに、施行から5年間の猶予期間が設けられています。

 

・建設業界の長時間労働の深刻化

 建設業は、近年、人手不足による長時間労働が深刻化しています。

 国土交通省の資料によると、国内の建設現場の約65%は「44休(週休1日以下)」で就業しているとされ、年間実労働時間も建設業は2,056時間(2016年度)と全産業平均より約2割長く働いていることになります。

 また、週休2日の確保に向けたアンケートでは、技術者・技能労働者問わず半数以上が「完全週休2日」または「48休」が望ましいと考えていますが、実際は15%程度しか取得できていない状況です。

 

 ・休日の確保、生産性向上となるか?

 建設関係団体は、政府の指針を受けて、建設労働者が休日を確保できるように工事の発注者と受注者の連携や、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)の技術活用など、生産性を向上させる工夫を検討していき、適正な工期設定等に取り組んでいくとしています。

法令違反の多い「自動車運転者を使用する事業場」の実態

・約83%の事業場で法令違反

厚生労働省から、トラック、バス、タクシーなどの自動車運転者(ドライバー)を使用する業場に対して行われた監督指導や送検の状況(平成28年)が公表されました。

監督指導が行われた事業場は4,381事業場で、前年の3,836事業場より多くなっています。

このうち、時間外労働、賃金台帳の記載内容、健康診断などに関して労働基準関係法令違反が認められたのは3,632事業場(82.9%)、拘束時間や休息期間などに関する改善基準告示違反が認められたのは2,699事業場(61.6%)となっています。

 ・監督指導等の状況

監督が実施された事業場数の内訳は、トラック:3,105、バス:487、ハイヤー・タクシー:405、その他:384でした。

労働基準関係法令違反については、特にハイヤー・タクシーで86.7%の違反率となっており、主な違反事項としては、どの業種でも「労働時間」「割増賃金」が多くを占めています。

また、改善基準告示違反については、「最大拘束時間」「総拘束時間」「休息時間」「連続運転時間」「最大運転時間」の順で多く指摘されています。

重大または悪質な労働基準関係法令違反による送検件数は60件となっており、前年より8件増えています。すべての業種でもすべて前年より送検件数が増加しており、特にトラックは上昇傾向が続いています。

 

・省庁間の連携による監督指導・合同監督

以前から、労働基準監督機関と地方運輸機関が、臨検監督等の結果(改善基準告示違反等)を相互に通報する取組みが行われています。労働基準監督機関から地方運輸機関への通報件数は、前年より増え867件となっています。「労基署の監督だから大丈夫」というような考えは、もはや通用しないでしょう。

また、平成28年は、ツアーバスを運行する貸切バス事業場に対する緊急の集中監督指導が行われたため、労働基準監督機関と地方運輸機関による合同監督・監査が行われたバス事業場は130に上りました(平成27年は17事業場)。

社会的に注目される事件・事故を契機に、行政の対応が強化されます。

 

・健康面の取組みが重要

近年、「健康経営」という言葉もあるように、従業員の健康について社会的な関心が高まっていますし、ドライバーに対する健康診断等も監督・監査での指摘事項に多く上がっています。

人手不足の状況の中、ドライバーが健康を害することはさらなる人手不足を招きますので、「健康」を中心にした労務管理を考える必要がありそうです。

実態調査にみる「職場のパワーハラスメント」の現状と予防・解決策②

・パワハラの発生状況

 従業員向けの相談窓口において従業員からの相談で最も多いテーマは「パワハラ」で、32.4%という結果が出ています。

過去3年間に1件以上「パワハラに該当する相談を受けた」と回答した企業は36.3%。

 一方で、過去3年間に「パワハラを受けたことがある」と回答した従業員は32.5%と、調査を始めた平成24年度から7.2%増えています。

 

・予防・解決に向けた取組状況

 パワハラの予防・解決に向けた取組みを実施している企業は52.2%で、企業規模が小さくなると実施比率は相対的に低くなる傾向にありますが、平成24年度と比較するとすべての従業員規模の企業で比率が高くなっています。

 パワハラに限らず、従業員向けの相談窓口を設置している企業は73.4%あり、企業規模が小さくなると設置比率は相対的に低くなるものの、平成24年度と比較するとすべての従業員規模の企業で比率が高くなっています

実態調査にみる「職場のパワーハラスメント」の現状と予防・解決策①

・調査の概要

 平成243月に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」から「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が公表されて5年が経過しました。

 同省は、この間におけるパワーハラスメント(以下、「パワハラ」)の発生状況や企業の取組状況などを把握し、今後の施策に反映させることを目的として実態調査を実施しました。

 全国の企業と従業員を対象に、平成287月から10月にかけて実施した調査結果に基づき、職場のパワハラの現状と予防策、解決策等についてまとめてみました。

厚労省が労働法令違反による送検企業名を公開③

・一覧は毎月公表、掲載期間は1

 厚生労働省は各労働局に対し、企業を書類送検したら公表するよう通達していますが、これまでは報道機関に資料を配布するだけの労働局が大半で、企業名をHPで公表する労働局は大阪や岩手など7局だけでした。

 今回の公表は、昨年末に発表した「『過労死等ゼロ』緊急対策」の一環で、同省は「一覧表にすることで社会に警鐘を鳴らす狙いがある」としています。

 なお、今後は月に一度内容を更新する方針とのことであり、公表期間は書類送検した日から約1年ですが、期間中に違法状態を改善した企業名はホームページから削除されるそうです。

厚労省が労働法令違反による送検企業名を公開②

・安衛法違反の事例が最多

 公表されたリストの内訳をみると、企業が安全対策を怠った労働安全衛生法違反が209件で最も多く、次いで賃金未払いなど最低賃金法違反が62件、違法な長時間労働をさせるなどした労働基準法違反が60件、労働者派遣法違反19件などとなっています。

 労働基準法違反では、女性社員が過労自殺した電通や、社員に違法な残業をさせた疑いで書類送検されたパナソニック、労災事故を報告しなかった疑いで書類送検された日本郵便などの大企業も含まれています。

 また、他にも三六協定で定めた時間を超える違法な残業をさせた疑いで、印刷会社や運送会社などが書類送検されています。

 同じ会社が複数回書類送検されたケースもあり、地域別では最も多かったのが愛知労働局の28件、次いで大阪労働局の20件、福岡労働局の19件となっています。

厚労省が労働法令違反による送検企業名を公開①

全国の労働局の送検企業を一覧で公表

 厚生労働省は5月上旬、長時間労働や賃金不払い、労災につながる安全配慮義務違反などの労働関係法令に違反した疑いで書類送検した企業名を、同省ホームページ(HP)に掲載しました。

 掲載されたのは334件で、全国の労働局が昨年10月以降に書類送検した企業・事業所名、所在地、公表日、違反した法律、事案概要などを県別に並べたものです。

 各労働局の発表内容を一覧表にまとめて公表したのは初めてのことです。

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