法令違反の多い「自動車運転者を使用する事業場」の実態

法令違反の多い「自動車運転者を使用する事業場」の実態

・約83%の事業場で法令違反

厚生労働省から、トラック、バス、タクシーなどの自動車運転者(ドライバー)を使用する業場に対して行われた監督指導や送検の状況(平成28年)が公表されました。

監督指導が行われた事業場は4,381事業場で、前年の3,836事業場より多くなっています。

このうち、時間外労働、賃金台帳の記載内容、健康診断などに関して労働基準関係法令違反が認められたのは3,632事業場(82.9%)、拘束時間や休息期間などに関する改善基準告示違反が認められたのは2,699事業場(61.6%)となっています。

 ・監督指導等の状況

監督が実施された事業場数の内訳は、トラック:3,105、バス:487、ハイヤー・タクシー:405、その他:384でした。

労働基準関係法令違反については、特にハイヤー・タクシーで86.7%の違反率となっており、主な違反事項としては、どの業種でも「労働時間」「割増賃金」が多くを占めています。

また、改善基準告示違反については、「最大拘束時間」「総拘束時間」「休息時間」「連続運転時間」「最大運転時間」の順で多く指摘されています。

重大または悪質な労働基準関係法令違反による送検件数は60件となっており、前年より8件増えています。すべての業種でもすべて前年より送検件数が増加しており、特にトラックは上昇傾向が続いています。

 

・省庁間の連携による監督指導・合同監督

以前から、労働基準監督機関と地方運輸機関が、臨検監督等の結果(改善基準告示違反等)を相互に通報する取組みが行われています。労働基準監督機関から地方運輸機関への通報件数は、前年より増え867件となっています。「労基署の監督だから大丈夫」というような考えは、もはや通用しないでしょう。

また、平成28年は、ツアーバスを運行する貸切バス事業場に対する緊急の集中監督指導が行われたため、労働基準監督機関と地方運輸機関による合同監督・監査が行われたバス事業場は130に上りました(平成27年は17事業場)。

社会的に注目される事件・事故を契機に、行政の対応が強化されます。

 

・健康面の取組みが重要

近年、「健康経営」という言葉もあるように、従業員の健康について社会的な関心が高まっていますし、ドライバーに対する健康診断等も監督・監査での指摘事項に多く上がっています。

人手不足の状況の中、ドライバーが健康を害することはさらなる人手不足を招きますので、「健康」を中心にした労務管理を考える必要がありそうです。

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