人手不足

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国内企業の3分の2が後継者不在!

・後継者問題で650万人の雇用が失われる!?

 春の人事異動の季節を前に、頭を悩ます人事担当者の方も多いことでしょう。

 一方、企業自体のとても大きな“人の異動”である「後継者」について、そろそろ本格的に考え始めている経営者も多いのではないでしょうか。

 近年、中小企業の事業承継が国家的な問題として認識され始めており、後継者問題等による廃業が急増することにより、2025年頃までの10年間で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性(経済産業省の推計)が示唆されています。

 

・同族企業の後継者は「子供」が約半数

 帝国データバンクが発表した「2017年 後継者問題に関する企業の実態調査」によれば、国内の66.5%の企業で後継者が不在であり、後継者候補は「子供」が40.5%、「非同族」が31.4%となっています。

 ただし、これを(創業者である場合を含まない)同族継承企業に限ってみてみると、66.9%が後継者不在であり、後継者候補は、「子供」が48.2%、「親族」が39.0%、「非同族」が3.7%となっており、M&Aなどによる非同族への事業承継意識が極めて希薄です。

 また、年商10億円未満の企業では、平均を上回る不在率(78.0%)となっており、承継準備が十分進んでいない実態もあります。

 

・M&Aの広がり

 60歳代後半から70歳代が平均的な引退年齢と言われていますが、代表年齢「60 歳代」の同族継承企業では48.0%と約半数、「70歳代」でも34.4%で後継者不在となっており、「安定した事業承継が特徴」といわれてきた同族企業にあってこの数値は低いとは言えません。

 近年、M&Aが浸透してきているとはいえ、M&Aによる事業承継は、国内企業の約4割を占める同族継承企業ではまだ3.7%にとどまりますが、今後、国の政策や金融面でのフォローが充実するとさらに広がってくることが予想されます。

 ただし、M&Aによる場合、子供への承継の場合とは違った人事・労務上の検討事項も多いですから、事前の準備が重要となります。

日本国内で雇用される外国人数が過去最高を記録

・外国人雇用状況の届出制度

 雇用対策法に基づき、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援などを目的とし、すべての事業主に、外国人労働者の雇入れおよび離職時に、氏名、在留資格、在留期間などを確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けられています。

 届出の対象は、事業主に雇用される外国人労働者(特別永住者、在留資格「外交」・「公用」の者を除く) です。

 以下の集計数値は、平成2910月末時点で事業主から提出のあった届出件数を基にしています。

 

・外国人雇用状況の概要

 日本での外国人労働者数は1278,670人で、前年同期比で194,901人(18.0%)増加し、過去最高を記録しました。増加の要因として挙げられるのは、「高度外国人材や留学生の受入れが進んでいること」「永住者や日本人の配偶者等の身分に基づく在留資格者々の就労が進んでいること」「技能実習制度の活用が進んでいること」等です。

 最も多い国籍は中国の372,263人で、全体の29.1%を占めています。続いて、ベトナム(240,259人、18.8%)、フィリピン(146,798人、11.5%)となっています。

 在留資格別では、身分に基づく在留資格の459,132人(35.9%)が最も多く、資格外活動(留学)(259,604人、20.3%)、技能実習(257,788人、20.2%)、専門的・技術的分野(238,412人、18.6%)、と続いています。

 

・事業所の状況

 外国人を雇用している事業所は、全国で194,595カ所あります。前年同期比で21,797カ所増え、こちらも過去最高を更新しました。

 都道府県別では、東京都(54,020カ所、27.8%)が最も多く、愛知県(15,625カ所、8.0%)、大阪府(12,926カ所、6.6%)、神奈川県(12,602か所、6.5%)、埼玉県(9,103カ所、4.7%)と続いています。

 

・産業別の状況

 産業別では、製造業が最も多く、外国人労働者全体の30.2%が就労しています。

 なお、建設業およびサービス業の外国人労働者は減少傾向にあります。

『AI』の影響により減少する仕事、増加する仕事は?

・厚労省の部会で議論がスタート

 何かと世間を賑わせている『AI』ですが、中でも我々の仕事への影響が気になるところです。

 12月初旬に開催された厚生労働省の労働政策審議会(労働政策基本部会)では、「技術革新(AI等)の動向と労働への影響」をテーマに議論がスタートしましたが、ホームページ上で公開された資料の中から「AI導入による仕事への影響」を考えてみます。

 

・求められるは『AI』にはできない仕事

 厚生労働省のホームページで公開された資料の中で、シンクタンクや各省庁等による先行研究の内容がまとめられています。

 『AI』等で代替可能性の高い(今後減少する)仕事、代替可能性の低い(今後増加する)仕事の例として、以下のものが挙げられています。

【代替可能性の高い(今後減少する)仕事の例】

・必ずしも特別の知識やスキルが求められない職業

・バックオフィス等、従来型のミドルスキルのホワイトカラーの仕事

・ルーティンタスク

・ホワイトカラーの仕事

・定型的業務が中心の職種

・教育水準や所得水準が低い労働者の仕事

【代替可能性の低い(今後増加する)仕事の例】

・他者との協調や他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業

・上流工程やIT業務における、ミドルスキル・ハイスキルの仕事

・人が直接対応することが質や価値の向上につながるサービスに係る仕事

・新しい付加価値の創出に役立つ技術職

 

・今後は必要な取組みとは?

 ビジネスパーソンにとって今後は、「AIを使いこなす能力」や「AIに代替されにくいコミュニケーション能力」を向上するための取組みが必要になってくると言えるでしょう。

まだまだ続く採用の「売り手市場」と労働条件の改善

・厚労省がアプリを次々と公開

 このところ、厚生労働省による無料のスマートフォン向けアプリのリリースが相次いでいます。

 例えば今年3月には、国民年金基金連合会と共同でiDeCo(個人型確定拠出年金)の資産運用体験ができるアプリを公開しました。同じく10月には、公的年金に関する基礎知識や、最寄りの年金事務所等を調べることができるアプリを公開しています。

 若者を中心に急増しているスマートフォンユーザーに対し、政策の普及と促進を図る意図があるものと思われます。

 

・労働条件アプリの内容

 そしてこのたび公開されたのが、学生や就労経験の浅い若者向けに、労働トラブルに関する法律知識の学習ができるアプリ『労働条件(RJ)パトロール!』です。

 内容は「過重労働」「ハラスメント」「不当な退職・解雇」など、よくある労働関連の法違反に関する簡単なクイズですが、そこから厚生労働省のwebページや、各地の労働局・労働基準監督署などの相談窓口に簡単にアクセスできる仕組みになっている点が特徴です。

 

・ブラック企業が広辞苑に載る時代

 いまや「ブラック企業」は、来年1月発行の最新版『広辞苑』(岩波書店)にも収録されるなど、すっかり一般的な言葉として定着しました。

 電通の過労死事件の問題や「働き方改革」の広がりもあり、就職活動中の学生や若手転職者は、企業の採用条件を大変シビアに見ています。

 

・まだまだ続く採用の「売り手市場」

 さらに今の時代、人材難がこの流れに拍車をかけます。文部科学省「平成29年度 就職・採用活動に関する調査結果」によれば、同年度の採用活動において、企業のうち93.0%が「売り手市場」であると回答し、さらに71.2%が「昨年度より強い傾向」と回答しています。

 採用される側が優位であれば、企業により良い条件が求められるのは必然であり、企業の労働条件をチェックする目は今後ますます厳しくなるでしょう。

 前述のアプリのように、手軽に労働法の関連知識を調べたり、労働トラブルを相談したりする機会も増えています。法令違反をしないよう注意するのは当然ですが、少しでも自社の労働条件を改善し、それを採用時にアピールしていくことが、企業存続のために必要と言えます。

 

“より長く働くことができる”中小企業が増加中

・高年齢者の雇用状況は?

 厚生労働省から、平成29年「高年齢者の雇用状況」(61日現在)が公表されました。これは企業に求められている毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を基に、「高年齢者雇用確保措置」の実施状況などを集計したものです。なお、雇用確保措置を実施していない企業に対しては、都道府県労働局・ハローワークは重点的な個別指導を実施するとのことです。

 今回の集計では、従業員31人以上の企業156,113社の状況がまとめられています。この結果から中小企業(従業員31人~300人規模)の状況を見てみましょう。

 

・「定年制の廃止」および「65歳以上定年企業」

 定年制の廃止企業は4,064社(前年比変動なし)、割合は2.6%(同0.1ポイント減)となり、定年を65歳以上としている企業は26,592社(同2,115社増)、割合は17.0%(同1.0ポイント増)となりました。

 このうち、定年制を廃止した中小企業は3,983社(同1社増加)、2.8%(同0.1ポイント減)でした。また、65歳以上定年としている中小企業は25,155社(同1,968社増)、18.0%(同1.1ポイント増)でした。

 

・「希望者全員66歳以上の継続雇用制度導入」

 希望者全員が66歳以上まで働ける継続雇用制度を導入している企業は、8,895社(同1,451社増)、割合は5.7%(同0.8ポイント増)となり、このうち中小企業は8,540社(同1,393社増)、6.1%(同0.9ポイント増)という状況です。

 

・「70歳以上まで働くことができる」

 70歳以上まで働ける企業は、35,276社(同2,798社増)、割合は22.6%(同1.4ポイント増)となり、このうち中小企業は32,779社(同2,504社増)、23.4%(同1.3ポイント増)という状況です。

 

・労働人口減への対策

 以上のように、2025年までに700万人が減ると言われている日本の人口問題を抱え、人手の確保のため、定年制の廃止やさらなる定年延長を行う中小企業は着実に増加しているようです。継続雇用制度に伴う規程類は定期的に見直しておきましょう。

 また、再雇用に伴う賃金や職種変更を行う場合は、より慎重な検討が必要です。

中小企業の7割近くが「賃上げ」を実施、その理由とは?

・企業規模別の調査

 10月下旬に、経済産業省より平成29年「企業の賃上げ動向等に関するフォローアップ調査」の結果が発表されました。

 この調査は「大企業調査」と「中小企業調査」にわかれており、前者は東証一部上場企業2,001社に調査票を送り364社が回答(回答率18.2%)、後者は中小企業・小規模事業者30,000社に調査票を送り8,310社が回答(回答率27.7%)しています。

 

・中小企業が積極的に賃上げを実施

 平成29年度に常用労働者の賃上げを実施した大企業は89.7%(前年度90.1%)、正社員の賃金を引き上げた中小企業・小規模事業者は66.1%(前年度59.0%)となりました。

 前年度と比較すると、中小企業が積極的に賃上げを行っている傾向がうかがえます。

 

・中小企業が賃上げを実施する理由は?

中小企業・小規模事業者が賃上げを実施した理由について、ベスト5は以下の通りとなっています。

(1)人材の採用・従業員の引き留めの必要性(49.2%)

(2)業績回復・向上(34.3%)

(3)他社の賃金動向(21.6%)

(4)最低賃金引上げのため(11.4%)

(5)業績連動型賃金制度のルールに従った(15.3%)

 

 

・賃金規定、人手不足に関する状況

 なお、中小企業・小規模事業者において、賃金表等を含む賃金規定を「持っている」と回答した割合は61.0%でした。

 また、「人手不足・人材不足」を感じていると回答した割合は66.4%、採用活動の方法については「ハローワーク」が最多(78.7%)となっています。

建設現場の「週休2日制」を実現へ ~建設業の働き方改革~

・建設業の働き方改革指針

 政府は、建設業の働き方改革として、建設現場の「週休2日制」の導入や雨や雪などの悪天候を考慮した「適正な工期」の設定などを盛り込んだ指針を決定しました。

 この指針には罰則はありませんが、建設業の長時間労働の是正に向けた取組みとして、これから発注する公共・民間工事を対象に実施するとしています。

 

・残業規制の適用に5年間の猶予

 今年3月に公表された「働き方改革実行計画」では、原則として全業種で残業時間を年間720時間、繁忙月は100時間未満まで認める上限を設ける方針を決定しましたが、建設業は運送業や医師とともに、施行から5年間の猶予期間が設けられています。

 

・建設業界の長時間労働の深刻化

 建設業は、近年、人手不足による長時間労働が深刻化しています。

 国土交通省の資料によると、国内の建設現場の約65%は「44休(週休1日以下)」で就業しているとされ、年間実労働時間も建設業は2,056時間(2016年度)と全産業平均より約2割長く働いていることになります。

 また、週休2日の確保に向けたアンケートでは、技術者・技能労働者問わず半数以上が「完全週休2日」または「48休」が望ましいと考えていますが、実際は15%程度しか取得できていない状況です。

 

 ・休日の確保、生産性向上となるか?

 建設関係団体は、政府の指針を受けて、建設労働者が休日を確保できるように工事の発注者と受注者の連携や、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)の技術活用など、生産性を向上させる工夫を検討していき、適正な工期設定等に取り組んでいくとしています。

深刻化する企業の人手不足②

◇影響が出ている業界にも変化が

 人手不足倒産が発生する業種としては、従来から「介護事業」や「IT関連」などの割合が高くなっていますが、近ごろはこれらの業種のように特殊な資格やノウハウが必要でない業種でも人手不足倒産が増えているそうです。

 ある社員が待遇面や給与面を理由にして他の従業員を引き連れて退社してしまい、人材不足から倒産に陥るという事例も見られるそうです。

 

◇影響が出ている中小企業は約7

 また、日本商工会議所が発表した調査(全国約3,500の中小企業を対象)では、「人手不足の影響が出ている」と回答した企業は約7割に上ったそうです。

 人手不足による具体的な影響については、「売上維持・売上増への対応が困難」が53.3%、「従業員の時間外労働の増加や休暇取得の減少」が48.8%、「業務・サービスの質の低下」が46.1%となっており、人手不足への対応としては、「既存従業員の多能工化・兼任化」が53.5%、「採用活動の拡大」が51.6%、「離職防止や新規人材獲得のための労働条件の改善」が38.8%となっています。

深刻化する企業の人手不足①

◇「人手不足倒産」増加の状況

 人手不足の問題が各方面で叫ばれているとろですが、帝国データバンクが7月上旬に公表したデータによると、人手不足による倒産件数は4年前の約2.9倍に増えているそうです

 2017年上半期の人手不足による倒産件数は前年同期比で44.1%増となり、2年連続の前年同期比増となりました。

 倒産件数全体に対する「人手不足倒産」の割合はまだまだ小さいものですが、業種や倒産する会社の規模に変化が出てきているそうであり、人手不足の影響の広がりが懸念されています。

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